債務整理で保険を解約すべき?解約返房金を充てるメリット・デメリットと失う保障

借金の返済額が大きく、保険料も毎月の負担が大きい。債務整理の借金の返済に保険料の解約で得た返金を充てられないか?と考える方もいるでしょう。今回はそんな方に解約と保障のメリット・デメリットについて解説します。

目次

債務整理のための保険解約は「最後の手段」。失う保障(デメリット)の理解が必須

保険を解約して債務整理の資金源の一部として活用することは有効な手段です。しかしその結果、万が一のリスクとしている保険の「保障」を失うことは大きなかけと言わざるを得ません。そのため保険の解約をもって返済に充てることは事実上「最後の手段」にしておくべきです。

また債務整理の目的は「生活の再建」です。もし解約後に大きな病気やけがをすれば、借金は減ったとしても高額な医療費という別の側面での経済的困難に見舞われるかもしれません。そのため生活再建が逆に遠のくリスクがあることも認識しておく必要があります。

なぜ慎重になるべき?借金返済(メリット)と、保障を失う(デメリット)の天秤

このように保険の解約には解約返房金による直接的な返済という短期的メリットと将来の万が一の保障を失う長期的メリットとの比較を考えておかねばなりません。

借金問題で精神的に追い詰められていると、どうしても目先の現金化に飛びつきがちです。しかし保険は物品の購入とは違い「健康」と「時間(将来の安心)」を対価に手に入れた権利であり、失うと取り戻すのが難しいでしょう。そのため「債務整理の問題」と「保険の問題」を分けて考える必要があり、両者がどう影響しあうのかについて説明していきます。

メリット:解約返戻金を返済原資や弁護士費用に充当できる

そもそも解約返房金とは?「貯蓄型」と「掛け捨て型」の違い

解約返房金(かいやくへんれいきん)とは保険契約を解約した際に払い戻しされるお金のことです。

保険には大きく2種類の保険が存在します。すなわち貯蓄型と、掛け捨て型。一般に貯蓄型は月々の掛け金が高く、満期日などに掛け金の一部が帰ってきたり、解約時には解約返房金として出資した金額がもどってくる保険です。一般的には「終身保険」「養老保険」「学資保険」「個人年金保険」などが該当します。

これに対し掛け捨て型は、月々の金額は安いものの、解約時には返金されないかあってもごくわずかという保険です。一般的には「死亡保障定期保険」「医療保険」「自動車保険」など。

あなたの加入している保険はどちらのタイプですか?保険証券を確認してみましょう。

換金できる保険とできない保険の見分け方

  1. 保険証券を確認する
  2. 保険会社の契約者専用ウェブサイトで確認する
  3. 保険会社のコールセンターまたは保険外交員に電話して確認する

保険証券に解約返戻金の記載があればそれを確認するだけで、およその現時点で解約した場合の金額が分かります。保険証券に記載がない場合は、保険会社が持つ契約者専用のwebサイトにログインして下さい。ログインなどの操作が分からない場合は、コールセンターに直接電話して、教えてもらうこともできます。もし解約返戻金が0円である場合には、解約しても戻ってくるお金はありません。

ここでは、解約返房金が発生する貯蓄型保険に加入している前提で話をしていきたいと思います。もし個々の解約返房金の総額が20万円以下の場合は、手元に残せる財産として解約をしなくてよいので、維持が可能です。なお掛け捨て型であっても解約して返金される場合がありますので、加入している保険会社の外交員に一度お尋ねになっておくのも有効でしょう。

貯蓄型の場合保険を解約するとお金が戻ってきます。ある程度まとまった金額が返金されるため、借金の返済に充てることは、返済総額を減らす点で有効です。自己破産の場合では保険の解約による返金(20万円を超える)を財産と裁判所が見なした場合、解約しなければなりません。

解約とは別になりますが、契約の内容を変更して、保険料を下げる「減額」や保険料の支払いを止めて保証期間を短くする「払い済み保険への変更」にする方法もあります。

その他契約中に返戻金の範囲内でお金を借りれる「契約者貸付」を利用できる保険もありますが、債務整理中に利用することは、返戻金の金額が少なることに加え、いざ保障を利用することになった場合に、返済分と利息が引かれて支払われるので注意が必要です。

デメリット(1):最大の懸念「失う保障」と再加入のリスク

もし解約直後に病気や事故、死亡したらどうなる?

解約した後にガンが見つかった場合などは高額な治療費がかかるでしょう。高額療養費制度を利用したとしても、毎月発生する治療費の限度額までは自己負担するので、長期間の治療の場合には入院治療費の支払いが困難になることが予想されます。

急な交通事故で一家の大黒柱が死亡した場合などでも、保険に加入していない場合には保険金がもらえず、葬儀などの費用を賄うことも厳しくなるうえ、その後の生活そのものが困難になる可能性があります。

このように債務整理での借金を減らせても、新たに大きな支出が出ると生活再建も振出しに戻ってしまう可能性も考えておかねばなりません。

健康状態や年齢によっては、保険の再加入条件が異なってしまう可能性

保険は健康な人が将来の出来事を保障するために入る商品のため、告知義務が課せられます。一般的に30代~50代になれば、入院や手術の機会、高血圧や糖尿病などの健康上の懸念が出る傾向にあります。緩和型の告知で済む保険もありますが、保障内容が同じではありません。

再加入のハードルも上がってしまいます。一度解約してしまうと以下のような懸念が。

  • 健康上の理由や過去の病歴でどの保険にも入れない。
  • 特定の病気は保障対象外になる。
  • 前の契約年齢時よりも年齢が上がっているため保険料が高くなる。

デメリット(2):債務整理の手続きにおける影響と注意点

債務整理といっても色々な方法があります。任意整理、個人再生、自己破産と大きく3つあります。このどの方法を用いるかで保険の取り扱いが異なります。なお特定調停という方法もありますが、保険の解約に関しては、ほぼ任意整理に近いと思うのでこの3つに分けて解説していきます。一応補足説明を入れておきます。

【自己破産】高額な返戻金は資産として原則解約・換金は必要

自己破産の場合、債権者に分配せずに生活のために保有できる資産を「自由財産」として所持することが認められています。例えば100万円未満の現金や20万円以下の資産など。保険は通常は本人にしかメリットがないので、対象外ではないかと思われがち。しかし解約した時に返戻金が20万円を超える場合、裁判所はこれを資産と見なし、原則解約して返済分配に充てられてしまいます。

そして解約返戻金が20万円を超えると、破算管財人が保険を解約する権限を持ちます。これを避けたい場合に「自由財産の拡張」を利用して、自己の財産として維持できる方法も有効。ただこの場合には管財事件扱いとなるので、管財人の費用としてさらに裁判所に追納する必要がありますが、財産を維持したい方には有効な手段にも。また裁判所を介する手続きはすべての債権者を対象に行う必要があり、保証人付きの債権だけを保証人に迷惑をかけたくないからと対象から外すことはできません。

ここで注意点があります。弁護士に相談する前に自分で解約して返戻金を生活費などに使ってしまうと、財産隠し(資産の意図的な減少)とみなされ、最悪の場合「免責不許可事由」として借金が免除されず、自己破産が失敗に終わってしまいます。くれぐれもご注意ください。

【個人再生】「清算価値」に含まれて返済総額が増える場合も

個人再生は住宅や保有資産を維持したまま、借金の圧縮や返済額の減額をして返済を続ける方法。そのため保有する財産を清算した金額と同等以上の返済を最低限支払うことが必要に。例えば全財産を換金した価値が100万円であったとしたら、借金の返済総額は100万円が最低ラインという訳です。財産を維持したままでの返済なので、課せられるルールであり、これを「清算価値保障の原則」といいます。

保険もこの対象となり解約返戻金の額が大きい場合には、「清算価値」に組み込まれます。想定よりも返済総額が高くなってしまう要因にも。通常3年ないし5年の期間で支払うため、月々の金額が膨れ上がることにもなるでしょう。ただ解約せず財産としてそのまま維持できることは将来の保障の維持、保険の再加入により契約時の「保険年齢」による保険料の引き上げをしなくて済むことは本人にもメリットがあり、一定程度の安定した収入が見込める方の整理方法となります。こちらも裁判所を通す手続きのため、一部の債権者を手続きから外すことはできません。

【任意整理】解約は任意だが、生活が成り立つか

任意整理は裁判所を通さない手続きであるため、保険を解約するかどうかは本人の自由で、「自己破産」や「個人再生」のように法的拘束力はありません。普通は弁護士や司法書士に依頼し、それぞれの債権者と直接交渉してもらい、3年ないし5年で分割返済します。今後支払う利息や遅延損害金をカットしてもらうことで返済金額を減らす手続き。借りた金額(元金)は減額できませんが、すべての債権者とではなく任意の債権者とだけの交渉もできます。

保険解約の判断基軸

  • 返済原資が足りず、解約返戻金を充てないと交渉が成立しないケース
  • 保険料の支払いが重荷になっており月々の支払いを優先させるため、解約や見直しが必要なケース

ただし、掛け捨て型などの場合、解約返戻金が戻ってこない場合には、家計を圧迫するほどでなければ解約には慎重な姿勢で臨む必要があります。これは先述の通り、将来の保障が受けられないからです。

補足「特定調停」の場合

「特定調停」は簡易裁判所の調停委員会に間に入ってもらい、債権者と話し合う手続きです。弁護士を介さないため弁護士費用が掛からない点で費用が安く済みます。その分裁判所への申請手続きなどは自分でやらなくてはなりません。書き方が分からない人がほとんどなので、窓口で尋ねると教えてくれます。保険に関しては、調停委員から解約についての提案がなければ、解約も必要ありません。

解約すべきか迷ったら。実行前に確認する3つの判断基準

自分にとって解約すべきか迷ったら、以下の点に該当するか今一度確認してください。

1.その保険は本当に「今」解約する必要があるか

  • 掛け捨て(返戻金がほぼゼロ)の医療保険など、万が一の備えとして最低限必要なものではないか?
  • 解約ではなく「減額」や「契約者貸付」で凌げないか?(ただし貸付も債務整理中は注意)

掛け捨ての場合は解約しても返戻金はなく、保障のみを失うので継続してください。もし保険料の負担が重荷になる場合は契約内容の変更や新たに別の保障内容を引き下げて契約するなど、保険料の金額を下げましょう。

2.保障を失っても家族構成や健康状態は大丈夫か

  • 独身者と、妻子(扶養家族)がいる大黒柱では、必要な保障が全く異なる。
  • 自分に持病はないか、家族に要介護者がいないかなど、リスクを再評価します。

家族がいる大黒柱であれば、家族を含めて保障がないことで不慮の出費に備えることができるか確認しておきます。新たな出費が原因で、返済計画が狂ってしまわないように注意が必要。

3.必ず弁護士・司法書士に相談してから判断する

  • 最重要の結論: 最終的な判断は、素人判断が最も危険です。
  • 相談のタイミング: 「解約する前」に、必ず債務整理を依頼する弁護士・司法書士に「保険証券」を持参して相談すること。
  • 専門家の役割: 専門家であれば、「どの債務整理方法が最適か」を判断した上で、「その保険は継続すべきか、解約(または他の手続き)すべきか」を法的に正しくアドバイスしてくれます。

これまで述べて通り、安易に保険を解約すると保障を失うだけでなく、債務整理の手続きへの影響が出る場合があります。必ず専門家に操舵して、保険の解約返戻金で返済の原資としての流用が適切か判断しもらったうえで、継続・解約の判断をしましょう。

参考図書:「99.9%解決できる!借金問題解決法」神坪浩喜著/星雲社

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