債務整理をしてもマイホームは残せる?諦める前に知るべき「個人再生」
手に入れた念願のマイホーム。しかし人生において急な出費はつきもの。冠婚葬祭などをはじめ予定してない出費に関しては、サラ金などの利用でやり繰りせざるを得ないことがあります。子供の教育資金でも予定していた公立から私立への入学になり学費が増加したりと想定外の出費につながることもあります。また、会社の業績不振によるリストラや賞与や給与の減額などは、予定している返済計画の基盤を揺るがす事態となりかねません。
これらが積み重なると住宅ローンも返済が厳しくなり、せっかく購入したマイホームも手放さざるを得ない。しかも住むところを奪われ、売却して残るのは借金の返済だけになってしまいます。これでは家を購入した意味がありません。
しかし諦めるのはまだ早い! 債務整理をしながらマイホームを残せる方法があるのです。「個人再生」の「住宅ローン特則」という方法を選択すれば、住宅を維持したまま債務整理が可能になります。
なぜ家を残せる?鍵となる「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」とは
個人再生における「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」とは、住宅ローンの返済を維持(返済計画の見直し含む)したまま、他の債務だけを大幅に減額する方法です。一般的に債務整理を行うと家などの高額な財産は手放すのが普通。しかしそれでは生活の基盤がなくなり、経済的な再出発が困難になります。そこで住む場所を確保しつつ生活の再建を目的として、住宅ローンだけを優遇する制度です。
【対象者チェック】住宅ローン特則を利用するための必須条件
この特則は誰でも利用できる訳ではなく、いくつかの厳しい条件があります。自分にとって条件に当てはまっているかの目安にして下さい。
住宅の購入やリフォームのためのローンであること
事業目的や純粋な住宅ローン以外の借金が含まれた場合は対象外です。例えば住宅を担保にして融資を得て、別に支払っていた車や生活費の借金と住宅ローンをまとめて1本化しまった場合など。これでは車の支払いや生活費の借金との区別ができなくなってしまいます。確かに家を担保にすることで低金利での融資が可能になるのはメリット。そこで多めに借りて学資資金など住宅費以外の費用に割り当てたら「住宅ローン特則」の対象外になってしまいます。住宅費以外の借金をまとめたローンを組む場合は慎重な判断が求められます。
申し立てる本人が所有し、居住している家であること
申し立てる本人が自宅として使用している場合のみです。投資用などのマンションなどは利用できません。また、店舗兼住宅の場合には、床面積の半分以上が居住用であることが求められます。
住宅に、住宅ローン以外の抵当権がついていないこと
住宅を担保にして自事業用融資を得ていたり、不動産担保ローンの場合などは、抵当権を行使されると自宅を維持することができなくなるので適用されません。また税金の滞納で差し押さえの登記がされている場合も利用できません。
その他自宅の価値が残債よりも高い場合も注意が必要です。例えば自宅の評価額が2,000万円、住宅ローン残高1,500万円、その他の借金が200万円だとすると、差額の300万円が資産と見なされるので特則が適用されません。差額が0かマイナスであることが必要になります。
保証会社による代位弁済から6ヶ月以内に申し立てること
住宅ローンの滞納が続くと融資した銀行へ保証会社が住宅ローンを全額返済します(これを代位弁済といいます)。代位弁済が行われて6か月が経過すると、この特則の利用ができなくなります。「個人再生」の裁判所への申立書の作成には時間を要しますので、1か月でも住宅ローンの滞納があり翌月も滞納解消の見込みがなければ、早急に弁護士や司法書士への相談が必要。相談をためらう時間的余裕はありません。
マイホーム維持だけじゃない!個人再生の5つのメリット
1.督促がなくなり、一括請求を回避できる
滞納すると当然ながら、督促が来ます。3か月連続で滞納すればブラックリスト入りは確実で、督促の電話に出るのもストレスに。専門家の受任通知が届くと督促も止まりますが、一番の恩恵は「住宅ローン特則」を利用することにより、金融機関が担保としている家を競売にかける手続きを止めること。裁判所の認可を得た再生計画通りに3年ないし5年で住宅ローンの返済ができれば、自宅に住み続けることも可能。もし滞納を続ければ、「期限の利益」を失い、ローンの残額を一括請求されてしまいます。こうなると分割返済は無理なので、早めの相談が重要。
2.元金も含めた大幅圧縮が可能
任意整理では将来利息のカットは出来ますが、元金の減額は応じません。「個人再生」では元金の大幅圧縮が可能です。最低弁済額はありますが、債務額の最大5分の1までカットされることが可能。任意整理にはない最大のメリットでしょう。
3.持っている財産を手放す(換価)必要がない
生命保険、自動車、有価証券などは自己破産であれば、最低限保有できる財産を除き売却して返済に充てる必要があります。個人再生の場合は売却する必要がなく、そのまま維持することができます。ただし保有している財産額相当の価格を弁済しなければなりません。資産が換金して100万円であれば、100万円は弁済しなければないのです。
4.借金の理由に関係なく利用できる
自己破産の場合は、借金に至る理由によっては出来ない場合があります。例えばギャンブルや浪費が原因であれば、自己破産が認められないケースなど(免責不許可事由)。自己破産では借金を全額帳消しに対し、個人再生では返済があるので理由に関係なく認められます。
5.資格制限がない
自己破産の場合、破産手続き開始決定から免責許可決定確定までの期間は職種により、資格の制限があります。つまり制限される仕事に従事している方は、職に就けないことになります。例えば生命保険の外交員や警備員や士業など他人の生命財産を取り扱う職種が主に該当します。「個人再生」ではそのような制限はありません。
必ず知っておくべき個人再生の4つのデメリットと注意点
1.すべての債権者を対象にする
任意整理では債権者を選んで、債務整理することが可能です。例えば、保証人のついた債権は保証人に迷惑が掛かるので外したい。車のローンは使用したいので除外したいと選別できます。しかし「個人再生」は裁判所を通す手続きであるため、すべての債権者に平等の原則が用いられ、一部を除外することができません。
2.官報に記載される
裁判所を通す手続きでは、官報に名前や住所が記載されます。しかし官報を読む人はほとんどなく、一般に目にする機会もないため、官報の記載が原因で知人等にばれる可能性は低いでしょう。またネットで名前や住所からは検索不可なのでできません。過去の紙媒体で保存されているものに関しては記録が残りますが、ネットでは発行から90日以降はプライベートな情報に関する部分は閲覧できなくなります。ただし闇金業者が目を付ける場合があるので注意。ブラックリストに載ると優良な貸金業者はお金を貸さないため、悪質な闇金業者は高金利で融資を持ち掛ける可能性があります。絶対に手を出さないようにしましょう。
3.すべての借金がなくなるわけではない
「個人再生」では元金も含めて大幅な借金をカットすることができますが、自己破産のように滞納した税金などを除き、全ての借金がなくなるわけではありません。最低弁済額もありますから実行可能な返済計画を作る必要があります。
4.ブラックリスト(異動情報)に載る
個人信用情報機関に異動情報が記録されます。新しくクレジットカードを作ったり、お金を借りることが約5年から7年間は出来なくなります。異動情報が削除されるまでの間は、家計をしっかりと把握し、生活水準を下げることで不測の事態に備えられる生活防衛資金を貯めることが重要になります。
まとめ:持ち家の借金問題は、まず専門家への無料相談から
「個人再生」は住宅ローンを抱えた人にとっては、マイホームを維持したままで返済計画が見直しできる点で、他の方法にないメリットがあります。一方で裁判所に申し立て、債権者との交渉など個人では手続きが難しく、専門家への依頼が必要。当然依頼費用もそれなりに掛かりますし、一定程度の安定した収入が得られなければ実行が難しい手続きでもあります。しかも延滞が続き、代理弁済後6か月以内に申立書を出さないと手続きそのものができません。重要な機会を逃さないように、無料相談を利用して専門家へ相談をし、速やかな解決を目指すのが大事です。

コメント