債務整理後の生活再建のカギは、家計を「固定費」と「変動費」に分解して”見える化”すること
債務整理を成功させるためには、弁護士や司法書士(以下弁護士等)との相談が必要になります。しかし、その相談にあたってやっておくべきことがあります。それは毎月の家計を把握しておくこと。家計を把握してないと弁護士等が適切なアドバイスが出来ません。
債務整理を行い、安定した生活を取り戻すためには家計の内訳を正確に把握して、適切に管理できることが重要です。特に、支出を「毎月必ずかかるお金(固定費)」と「月によって変動するお金(変動費)」に分けることで、具体的に改善するポイントを見つけ出し、実行するための第一歩となります。
なぜ家計の分解が生活の再建に必要なのか?3つの理由
家計の分解が必要な理由については以下の通り解説します。
理由1:返済計画の現実味が格段に上がる
毎月最低限必要な生活費(固定費+必要最低限の変動費)が明確になり、無理のない返済可能額を算出できる。弁護士・司法書士との面談時にも、具体的な数値を元に的確な相談ができるようになる。
漠然と毎月のお金の推移が分からないと、いつの間にか残高が減って、給料日前にはお金が足らない。キャッシングでやり過ごそうとなってしまいます。もちろん貯金は余ったお金を回すつもりが、まったく出来ていないと。これでは、返済計画を立てることが出来ません。
理由2:”削るべき支出”と”守るべき支出”が明確になる
家計を分解することで、どこに無駄が潜んでいるのかを発見しやすくなる。「なんとなく使いすぎている」という状態から脱却し、効果的な節約策を立てられる。
先ずは固定費を除いて、消費に回せる金額を把握します。そこから、食費、水道光熱費、医療費など優先順位の高い支出を差し引くと、使える金額が出ます。ここで手取り金額以上になると赤字です。必然的に削らないといけない支出が浮き彫りになるはずです。
理由3:将来への漠然とした不安が解消され、精神的な安定をもたらす
家計がブラックボックスの状態だと、「このままで大丈夫だろうか」という不安が常につきまとう。お金の流れを把握することで、状況をコントロールできているという感覚が生まれ、前向きに生活再建に取り組めるようになります。
毎月使える金額(予算)を把握しているだけで、無駄な買い物に歯止めがかかります。「今月は○○にお金を使ってしまったから、来月にしよう」という判断も可能になれば、節約意識も出来て、計画的な消費につながります。
今日から出来る!家計を分解して見直す具体的ステップ
では具体的に家計を分解する手順について解説します。
すべての支出を洗い出す
過去1〜3ヶ月分の通帳やクレジットカードの明細、レシートなどを用意する。必要に応じて通帳記帳などを行います。可能な限り購入した物と金額を書き出しておく。レシートの出ない自販機での購入した飲み物なども1円単位でメモします。日付も分かるものは書いておきましょう。また本日以降購入した物は全てレシートをとっておき、家計簿に記録やアプリに入力しておきます。
家計簿をつけるのが面倒であれば、ノートを購入しておき、全てのレシートを日付毎に貼ることを勧めます。この時レシート同士が隠れないように離して貼ってください。重なると集計するときに計算しにくくなるからです。この作業は毎日行ってください。まとめてやろうとすると、時間が掛かり大変になります。私のズボラ式家計簿のつけ方でも大丈夫です。
とにかく1円でも消費したものがあればすべて拾って記録や入力してください。1品毎の商品名でなく、食品、飲料、酒、日用品、通信費などの項目別で大丈夫です。理想は手取り収入金額と消費金額と資産(負債)が一致していれば良いくらいで構いません。自分で一番管理しやすい方法で行えば大丈夫です。これを3ヶ月続けると、支出の傾向が読み取れてくると思います。
「固定費」と「変動費」に分ける
「固定費」と「変動費」を下記の項目に分けて家計簿等に記入又はアプリ等に入力していきます。固定費と変動費で迷う場合はどちらかに決めて振り分けても問題ありません。
「固定費」とは月によって金額が大きく変わらない費用で以下のものを指します。
- 「住居費」家賃、住宅ローン、
- 「水道光熱費」水道費、電気代、ガス代、
- 「通信費」携帯電話料金、インターネット料金
- 「保険料」生命保険、医療保険、自動車保険、火災保険など
- 「自動車維持費」駐車場代、自動車税、カーローン、車検代
- 「教育費」授業料、塾や習い事、
- 「サブスク費」アプリ利用月額料金、Amazonプライムなどの利用費
見直しのポイント:見直すことで支出を減らし、かつ長期的に効果が上がるものについて行います。
大手キャリアから格安SIMへの乗り換え、電力・ガス会社の変更、加入している保険の見直し、不要なサブスクの解約など。薬もジェネリックに変えてもらうなど工夫をします。家賃を抑えるために引っ越すのは効果的ですが、一時的に高額な費用が発生してしまうので、可能な人だけ検討しましょう。
「変動費」とは月によって支出額が変わるものを言います。
- 「食費」食材費、外食費
- 「日用品費」普段の生活で使っているもの、トイレットペーパーや洗剤等
- 「交通費」ガソリン代、電車やタクシー料金
- 「交際費」知人との食事、イベント参加費など
- 「娯楽費」趣味やレジャーなど
- 「被服費・美容費」服や靴の購入、理髪代など
- 「医療費」薬の購入、病院代
- 「特別費」引越し代、冠婚葬祭、家電の買換えなどのまとまった一時的な出費
- 「雑費」上記に当てはまらない細かい支出
これらの項目を仕分けして当てはめてみて下さい。3ヶ月の推移を各項目ごとに見て改善しましょう。
見直しのポイント:例えば毎週の使える予算を決めておくのも効果があります。また外食を出来るだけ減らしたり、値引き品の購入で価格を抑えて自炊も良いでしょう。
結構陥りがちなのはコンビニに立ち寄ることです。コンビニはスーパーよりも割高で販売しています。どうしても購入しなければならない時を除き、コンビニ自体への訪問を減らすのが無駄使いに効果的。スーパーやドラッグストアなどポイントを貯めることで値引きするなど、ポイ活の利用も効果的です。そのほか、節約術の動画などを参考にしてみるのも有効です。
借金返済を優先事項として予算に組み込む
「固定費」「変動費」を元に算出した生活費と、収入を比較し、捻出できる返済額を決めましょう。先ずは見直した固定費を積み上げます。これで毎月最低限、必要な固定費が分かりました。次に借金返済額ですが、各社毎月支払うべき「最低返済金額」を合算します。一般的には利息+元金が表示され、例えばA社は3,000円、B社は8,000円、C社10,000円などとなり、この場合は3社合計で21,000円が毎月の返済額になります。
毎月の手取り収入- 借金返済額 – 固定費 = 残りが出ます。この残りから変動費を賄うことになります。この時点で変動費が賄えない場合は、弁護士等に早急に相談する必要があります。つまり「最低返済金額」を下げてもらう交渉が生じるからです。
この交渉は債務者からでは困難なので、弁護士等に依頼するのが良いでしょう。
家計の把握は、新しい生活を築くための設計図です
以上のように、債務整理にあたっての家計を把握する重要性を理解されたのではないでしょうか?家計を見直して債務整理に向けた準備を進めることは、借金整理だけでなく、これからの新しい生活の始まりととらえて下さい。
その第一歩として家計を正しく理解して、自分でお金の流れをコントロールすることが重要です。そのためには「固定費」を徹底的に見直して、支出を抑える。手取り収入から「固定費」と「最低返済金額」を差し引き、残りの金額で変動費を賄うことが必要になります。「変動費」をどんなに削っても生活費が捻出できないようであれば、「最低返済金額」の減額交渉が必要。
しかし、債権者は債務者の交渉には応じないことが多いので、弁護士等の力が必要になります。借金問題の解決は弁護士等によって解決することがほぼ100%可能。加えてその後の生活再建までの的確なアドバイスも役立ちます。悩んでいるだけでは解決には結びつきません。専門家に相談することで解決に向けて歩み、新しい生活を築いていきましょう。

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