夜逃げは人生の再建ではなく「破綻」への近道です
多額の借金を背負い、毎日の債権者からの督促。支払いのために他社から借りて別の貸金業者の返済金に穴埋め。食べるものもままならず、必用な光熱費や家賃の滞納でいつ止められるか分からない。
こんな状況では、いっそのこと「夜逃げ」でもしようかと思うのも無理はありません。「夜逃げ」すれば借金からも、債権者からも目の届かない状況で、いちから生活再建できるのでは?
残念ながら、夜逃げでは借金問題の解決にはなりません。むしろ人生破綻への近道に突き進むことになります。この記事では、夜逃げでは解決に至らない理由と「債務整理」について解説します。
夜逃げが借金解決にならない「3つの具体的理由」
結論から言うと「夜逃げ」は債務整理の手段とはなり得ません。「債務整理」は法律に基づいて借金の減額や免除を行うことで、生活再建を目指す法的手段です。これに対し夜逃げは、法律を無視し問題を先送りするだけで、何の解決にも結び付きません。むしろ、問題の悪化により、将来の生活再建への道も困難になってしまいます。
なぜ、夜逃げは債務整理の対象とはならないのか。その理由は法律を無視した行動だからです。
理由1:夜逃げには法的効果がない
「債務整理」には任意整理、個人再生、特定調停、自己破産の方法があります。全て法律に基づき債権者との借入金の減額を行ったり、裁判所を通じて支払いを免除してもらうことで、支払い義務をなくすことが出来ます。
「夜逃げ」は契約内容を維持したまま、支払い義務を放棄した状態です。契約は生きていますので、借金の支払い義務は残り、債権者からの借金の減額や免除とはなりません。また、時効をねらっていたとしても、債権者は裁判上の請求で中断させるので、時効が成立することはほぼありません。逆に遅延損害金が上乗せされて借金が膨れ上がり、より解決を困難にします。
理由2:夜逃げは「生活再建」ではなく「社会的自殺」
債務整理の目的は借金問題を法的に解決して、再び安定した生活を送る「生活再建」です。弁護士に依頼することで、督促が止まり、適切な生活再建に向けたアプローチになります。弁護士は債務者と共に将来への安定した生活のために尽力してくれるでしょう。
夜逃げでは仕事を変える場合、定職に就くには住民票などの証明がいります。それを避けるためには日雇いなどの低賃金の労働でしか働けない。公的郵便物が届かずに免許証や健康保険証が失効してしまう。だから必要な行政サービスが受けられない。税金の滞納は債務整理の対象外なので、原則免除されることはありません。など、様々な問題が生じます。
理由3:大切な人を巻き込む
借金に保証人がいた場合、その責任は保証人が負います。もし支払いが出来ない場合、自己破産に追い込まれ保証人との人間関係にも影響します。
夜逃げでは所在を知られないために、住民票を移すことも出来ない。家族と共に移動すれば本人だけでなく家族にも影響が及ぶ。子供がいれば、事情も話せずお友達との関係も切れてしまうでしょう。
また、これまで築いてきた友人・知人等の人間関係を断ち切ることになります。さらに居場所を突き止められないように、常に他人から身バレを気にして周囲を警戒した生活になるでしょう。結果として社会的な孤立を招くことにもなりかねません。これは耐え難い精神的苦痛となるのです。
夜逃げの末路と、生活再建した具体例
ここで二人のモデル事例を出して比較しましょう。
夜逃げを選んだAさん
300万円の借金から逃れるため、家族を連れて夜逃げしたAさん。身分を隠し、日雇いの仕事で食いつなぐ日々。ある日子供が高熱を出したが、保険証がなく病院に連れていけない。全額自己負担では払えないため、市販薬でしのぐしかなかった。数年後、探偵を雇った債権者に居場所を突き止められる。遅延損害金で500万円以上に膨らんだ借金の支払いを命じられ、結局自己破産に。失われた数年間の苦労は何の解決にもならなかった。
債務整理したBさん
Aさんと同じ300万円の借金に苦しんだBさんは、勇気を出して弁護士の無料相談へ。弁護士が介入したその日のうちに、業者からの督促がピタリと止んだ。収入や財産の状況を正直に話した結果、弁護士のアドバイスのもと、自己破産の手続きを選択。数か月後、裁判所に認められ、借金の支払いが免除(免責)。現在は、職場も安定して働け、家族と穏やかな生活を続けている。
この二人の事例の差は、勇気を出して専門家への相談をしたか、しなかっただけです。
夜逃げではなく、債務整理で生活再建を目指す
債務整理の方法
繰返しにはなりますが、夜逃げはあなたとあなたの家族からの未来を奪うだけです。しかも身バレに怯えながらの生活はストレスになります。
あなたが本当に目指すべきは、借金から逃げることではなく、法律に則って借金問題を解決し、胸を張って生きていけるような「本当の生活再建」です。そのための具体的方法が「債務整理」になります。
債務整理には以下の4つの方法があります。
1.任意整理:裁判所を通さず、弁護士が債権者と交渉し、将来利息などをカットして概ね3~5年で分割払いをする方法。
2.個人再生:裁判所を通して、借金を1/5~1/10程度に大幅に減額してもらい、3年程度で返済していく方法。持ち家を維持したい場合などに有効。
3.特定調停:裁判所を通して、返済に困る債務者が調停委員の助けを借りて債権者と交渉し、利息カットや分割払いする方法。弁護士などの依頼費用を抑えられる。
4.自己破産:裁判所を通して、支払い不能であることを認めてもらい、原則として借金の支払いを全額免除(免責)してもらう方法。
あなたが出来ること
「弁護士に相談なんて」と思うかもしれません。でもためらう必要はありません。法テラスを始め、初回相談は無料にしているところが多いです。
- あなたの状況に合わせた最適な解決策を教えてくれる。
- 費用がいくらかかるか示してくれる。
- 相談=依頼と考える必要はない。
- 相談内容の秘密は守られる。
というようにメリットは大きいのです。
一人で悩んで、夜逃げを選択する前に、先ずは弁護士や司法書士などの専門家の話を聞いてみて下さい。生活再建への手助けとなるはずです。

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